真空ガラススペーシアで窓を改修
涼しく暖かく省エネな“終の棲家” に

特別養護老人ホーム
ウォームヴィラ新庄園
キービジュアル
ケアを必要とする高齢者の暮らしを支える医療福祉施設は
今もっとも必要とされる存在のひとつ。
人への優しさが求められる建物のエコ改修に昨年
真空ガラススペーシアが採用されました。ご紹介しましょう。
省エネと快適さを求め、特養施設のエコ改修を決断
ウォームヴィラ新庄園は、奈良県・葛城山麓の高台に位置しています。奈良盆地や大和三山を一望する自然豊かな環境に恵まれる一方、夏の最高気温は35℃超。冬場は零下まで下がり、年数回は積雪も記録します。
 “夏暑く冬寒い” 内陸らしい気候風土です。
デイサービスやショートステイのほか、メイン事業は認知症や介護度の高い利用者が暮らす特別養護老人ホームの運営です。個室・2 人室・4 人室で百余名の方が『終の棲家』としてここを生活の場とし、エコ改修は居室の窓を優先に行われました。
ウォームヴィラ新庄園。
標高約200m の緑大き高台に建ち、窓からの眺めは抜群だ
理事長の上田麻子さんは、改修に踏み切ったきっかけを「空調用のガス料金をはじめ、光熱費の高騰に対する懸念」と語り、さらに『社会福祉充実計画』の一環でもあります、と振り返りました。
それまで「窓ガラスの交換が省エネにつながる」といった情報にはほとんど触れていなかったといいます。たまたま排煙窓につける網戸の相談をしていたガラス専門会社との出会いが、すべての始まりでした。
会議室でお話をうかがった。上田麻子理事長のほか、改修提案と工事を担当した村島硝子商事(株)の村島靖基社長(左手前)、日本板硝子ビルディングプロダクツ(株)大阪支店の内藤弘光さんにもご同席いただいた
窓ガラスで省エネって本当? お試し改修で確認
ガラス窓は、熱気や冷気が建物の内と外の間で出入りする最大の通り道です。
夏の熱い空気や日差しの熱はその約7 割が窓から部屋に入り、反対に冬は暖房された室内空気の約6 割が窓から外へと流出していきます。
“窓を変えると省エネにつながる” のは、こんな仕組みがあるから。ガラスの断熱力を上げて熱の出はいりを遮断すれば、部屋の中は涼しく暖かく保たれ、冷暖房も小さなエネルギーで済むようになるというわけです。
窓のエコ改修を園に提案したのは、お隣の橿原市で今年百周年を迎えるガラス専門会社・村島硝子商事でした。既存の窓枠は残し、ガラス面だけ真空ガラススペーシアに換えて断熱性能をアップする“ガラス交換”という改修手法です。
3 階南側の個室。かわいらしい障子が直射日光と利用者の気持ちをやわらげる
けれど、当初は上田さんも施設長の森本潤哉さんにも情報がほとんどなく、効果には懐疑的だったそうです。50 余ある居室の窓の工事には相応のコストもかかるため、不安を払拭すべく“おためし断熱改修” と“温熱環境測定” が行われました。
日本板硝子ビルディングプロダクツの内藤弘光さんは「3 階の1 フロアの居室をスペーシアに換え、既存のガラスとの表面温度の違いと、室温への影響を比較しました」と話します。
2022 年7 月15 日から8 月31 日まで、お試し改修を行った3階南面の居室でスペーシアと単板ガラスそれぞれの表面温度と室内雰囲気温度を測定。うち8 月1 日から3 日を代表日としてグラフを作成した。赤い線がスペーシアの表面温度を、紫の線が室内の気温を示す。青は奈良地方気象台観測による公式な気温、緑色は単板ガラスの表面温度。黄色の背景は日照時間を示している。エアコンは常時稼働していた(データ提供:日本板硝子ビルディングプロダクツ)
結果、ガラスの表面温度はスペーシアと既存のシングルガラスとで最高2.1℃の差が生じ、室温については1 日の振れ幅が小さくなって安定する状態が見られました。
調査は数値だけではありません。エコ改修にとって重要な要素であるご利用者の方やスタッフの体感も、もちろんうかがいました。
暑さも冷気も真空ガラスの窓が遮断 快適で安心な館内に
工事の実施は2022 年8 月の約1ヶ月間です。対象は104 床ある全居室の窓で、面積にして604 ㎡、計257 枚の窓ガラスが、通常通りにホームを運営する中で交換されました。
「工事以前の夏は窓からの直射日光が強かった。窓辺で寝ている利用者さまの体温が上がってしまうので、その時期はカーテンを引き、ベッドも移動しました。窓からの景色を楽しんでいただきたかったけれど、体調には代えられないですから」と森本さん。
ガラス交換後は、真夏の窓辺に立ってガラスに触れても暑さを感じなくなり「カーテンも、ベッドの移動もいらなくなりました。エアコンもすぐ効くようになり、スイッチを切ってもよく保たれていますよ」とにっこりしました。
一方、最低気温が奈良の市街より2℃も低い冬は「とくに北向きの窓はすきま風もあって寒かったです」。ガラス面は激しい結露にも悩まされていたといいます。
こちらも工事後は「利用者さまからは時々『寒くないよー』の声を聞きます。ご自身で訴えることができない方もいるので、このような声が聞けるとスタッフも安心。非常に大きいことですね。高齢者にとって室温の大きな変化はよくないので、快適さは大切なんです」
2 階南側の4 人室。空や山並みの眺めが美しい。窓辺からベッドを遠ざけ、カーテンを引くのはあまりにも惜しいだろう
2 階の2 人室。北を向く窓はかつて結露が激しく、冬場はスタッフが毎日のように拭いていたという
ちなみに新庄園の暖房設備は、ガスを熱源とする温水暖房をメインに、複数の石油ファンヒーターを加える形で運用しています。

上田さんいわく「ガスの全館空調とファンヒーターのハイブリッドで、効率が上がりました。起床時は各居室をガスで空調し、その後に切って、利用者さまは談話室へ。ここはファンヒーターで素早く暖めます」
その後、部屋に戻っても朝に暖めておいた室温が保たれていて、少し暖房するだけで過ごせるといいます。スペーシアの断熱力が可視化されているようです。
各居室の入口には、住宅を思わせる意匠が施されている。暖められた部屋からこの廊下を通って談話室へ
さらに森本さんは「ちょっと寒いかな? と感じる時期にガス空調を使わずファンヒーターだけで対応できるのもいい。5 分10 分で効きます」。全館空調に手をつけず、窓の断熱力を生かしてスポット的かつ短時間の暖房で間に合う。効率の良さがうかがえるお話です。
設定温度も、工事前と後とで2℃くらいは変わったといいます。トータルな省エネ効果は、工事後のガス使用量と価格の前年比測定データのかたちでも如実に現れました。
2022 年4 月から2023 年5 月のガス料金と同使用量の前年度比を示すグラフ。黄色は価格、茶色は使用量を示す。ガラス交換によるエコ改修後は両数値とも明らかに下がっている(データ提供:日本板硝子ビルディングプロダクツ)
既存枠を生かす、使い方で考える…窓の改修は多種多様
スペーシアの断熱性能は、2 枚のガラスの間に0.2mm 幅の真空スペースをつくることで日射の熱や外の冷気を遮断し、かつ室内の快適な空気は外に逃さないことで実現しています。
2 枚のガラスで構成されていながらも薄く、シングルガラスが入っている既存サッシの溝にそのまま入れ替えることが可能。工事がスピーディに進むのも、断熱力と合わせたメリットといえそうです。
真空ガラススペーシアには、2 枚のガラスの間にある真空層を支える極小のステンレス製マイクロスペーサーが並ぶ。製造時に真空吸引した穴を保護する丸いキャップも、スペーシアのトレードマークだ
また今回は、窓のエコ改修の別手法である“内窓設置” が選ばれませんでした。
なぜでしょうか。
日本板硝子の内藤さんは「新庄園さんの窓は欄間が多く、内窓では気密がとりづらい面がありました」と話します。
新庄園の居室とくに4 人室の窓は、欄間や引き違い窓、ガラスドアなど複数のガラス窓を組み合わせて大きな開口をつくっています。内窓より、ガラスだけ交換してそれぞれの開閉を生かすのが自然との考え方はうなずけるものでしょう。
窓の状態や使い勝手に合わせて工事の仕方が選べることも、実際の改修計画時に覚えておきたいポイントのひとつ。
既存サッシを生かすガラス交換には、窓枠全体を加工・交換する“外窓工事”と比べて圧倒的に短工期という特徴もあり、コスト+館内環境の平常化・業務支障の軽減面にも一定のメリットがあります。
2 階の4人室。北面の壁はほとんどガラス張りだ。引き違い窓、ベランダに出られる掃き出し窓、その上にはめられた欄間など多様な窓で構成されている
利用者の健康と施設経営。双方に貢献する真空ガラス
断熱ガラスによる医療福祉施設の窓改修について、森本さんはこう語ります。
「とくに高齢の利用者さまにとって、直射日光による熱の軽減は体調面で大きな効果があります。お元気に過ごせていただきたいし、体調を崩して入院されれば空室扱いとなって施設経営にもいいことはありません。健康と経営双方が安定する。改修にはそういう面もあると思っています」
さらに「ガラスは一度工事をすれば長く使えるし、結露や暑さに対応するスタッフの労力も軽減できます」と続けました。
その上で計画当初を振り返り「もっと前に、断熱ガラスの効果に関する情報が欲しかったですね」。スペーシアの活躍が目に浮かびつつ、その存在はより一層の周知も求められているようです。

山と樹々、広い空に囲まれたすばらしい風景を快適な窓辺からゆったりと眺めて過ごす…私たちの社会を支えてきてくれた大先輩たちの、穏やかで心地よい暮らしが長く続きますように… そんな思いで新庄園をあとにしました。
2 階南側の居室には、窓の外に今もオーニングが残る。かつて差し込んでいた直射日光の強さを感じさせるようだ
フロアでは音楽療法が行われていた。取材に訪れたのは7月7 日。七夕の歌とともに体も動かして楽しむ。
この日のピアニストは上田理事長
取材日   2023年7月7日
取材・文  二階さちえ
撮影    小田切 淳
取材協力  村島硝子商事(株)  https://mgsnsg.co.jp/
Data
立地 奈良県葛城市
住宅形態 医療・福祉施設
リフォーム工期 2022 年10 月
リフォーム費用
利用した
補助金等