ガラスの結露の原因?熱伝導率・熱貫流率とは
寒い季節になると温かいコーヒーが恋しくなってきたりもします。そんな時、コーヒーポットの素材で温度の違いを感じたことはありませんか? 今回は熱にまつわる話として、ガラスの結露にも影響する「熱伝導率」・「熱貫流率」についてご紹介していきます。
目次
「熱伝導率」とは
皆さんは「熱伝導率」という言葉をご存知でしょうか?昔、理科の授業で習った記憶があるという方も多いのではないかと思いますが、今一度おさらいしてみましょう。
そもそも熱伝導とは熱が物体中を伝わって高温部から低温部に運ばれる現象で、「熱伝導率」とはその熱伝導の比率を表しています。つまり、物質の熱伝導のしやすさを表しています。単位としては、ワット毎メートル毎ケルビン[W/(m ・K)]が用いられています。伝わる熱のしやすさを表しているので、数字が大きいほど熱が伝わりやすく、逆に数字が小さいほど熱が伝わり難い物質であるといえます。では、日常でみなさんの周りにある素材や材料の「熱伝導率」はどうなっているのでしょうか?具体的な数字をみた方が、よりイメージが深まるかと思います。
各種材料の「熱伝導率」の比較
・鋼 36~56W/(m・K)
・ステンレス 16W/(m・K)
・アルミニウム合金 209W/(m・K)
・ガラス 1W/(m・K)
・ポリカーボネート樹脂 0.198W/(m・K)
・空気 0.025W/(m・K)
これらを熱の伝わりやすい順に並べ替えると、
「①アルミニウム>②鋼>③ステンレス>④ガラス>⑤ポリカーボネート樹脂>⑥空気」
となります。なんと、アルミニウムはガラスの200倍以上ということになりますね。冷たい缶ジュースや缶ビールがアルミ缶で冷たくおいしくいただけるのは、このためなんです。
「熱貫流率」とは
続いては「熱貫流率」という言葉です。こちらは聞きなれない、もしくは初めて聞いたという方が多いのではないでしょうか?「熱貫流率」も「熱伝導率」同様、熱の伝わりやすさを示していますが、少し意味合いが異なっています。「熱伝導率」が物質そのものの熱の伝わりやすさを示すのに対し、「熱貫流率」は室内外両側の温度差が1K(ケルビン)ある場合、1㎡の面積を何ワットの熱が壁体を通過するかを示した値となります。単位はワット毎平方メートル毎ケルビン[W/(㎡ ・K)]となります。
若干話が難しくなってしまいましたが、「熱貫流率」は、建物の壁、床、窓などの複合材料の断熱性能を表わす指標として主に用いられています。こちらも「熱伝導率」同様に、数字が大きいほど熱が伝わりやすく、数字が小さいほど熱が伝わり難いということを表しています。また数字が小さく、熱が伝わり難いということは、建物の壁、床、窓などの部材や材料が断熱性能に優れているということの裏付けでもあります。
「熱伝導率」・「熱貫流率」と結露の関係
ここまでは、「熱伝導率」・「熱貫流率」という言葉の意味を中心に説明してきましたが、では結露とはどんな関係があるのでしょうか?
そもそも結露とは、物体の表面や壁体の内部に空気中の水蒸気が凝縮して水滴が付着するもので、具体例としては冷たい水を注いだ際のグラスや冬場の窓ガラスなどの表面についた水滴などが挙げられます。つまり空気中の水蒸気が冷たいものに触れることで、凝縮され結露となって表れるのです。
冬場の窓ガラスに付いた滴り落ちるような結露、とても不快ですよね。一度掃除をしても時間が経つとまた同じように水滴が付いてしまいます。先ほどもご説明した通り、空気中の水蒸気は冷たいものに触れることで結露となって水滴に姿を変えます。
では、冬に冷たい窓ガラスとはどんなガラスなのでしょうか?ここまでくれば皆さんもお分かりですよね。冬の外はとても寒い。なると、冷えやすく・結露しやすい窓ガラスとは、「熱伝導率」・「熱貫流率」の数字が大きいガラスなんです。つまり断熱性が低いガラスともいえますね。ガラスの断熱性が低いと室内側ガラス表面から室外側に向けて失われる熱が増加し、ガラスの表面温度が低くなります。そして、室内側ガラスの表面温度が低いほど結露が発生しやすくなるのです。
ガラスによる熱貫流率の違い
それではガラスの種類毎に「熱貫流率」の違いをみていきましょう。「熱貫流率」はガラスの断熱性を示しているので、その違いをみれば、結露の発生しやすさを判断することが可能です。
ここでは代表的な窓ガラスを中心に説明していきます。
代表的な窓ガラス
■フロート板ガラス
一枚ガラスと呼ばれるもので、いわゆる普通の窓ガラスです
■複層ガラス
スペーサーと呼ばれる金属部材で2枚のガラスの間に中空層を持たせたガラスで、中空層には乾燥空気が封入してあります。ガラスより熱伝導率の低い空気を挟み込むことで、熱移動を防ぎ断熱性能を高めたガラスです。
■Low-E複層ガラス
複層ガラスの一種ですが、一方のガラスにLow-E膜と呼ばれる特殊な金属膜をコーティングしたガラスで構成され、Low-E膜は赤外線をカットする特性があり、通常の複層ガラスよりも高い断熱性が期待できます。
■アルゴンガス入りLow-E複層ガラス
Low-E複層ガラスの中空層に空気よりも熱伝導率の低いアルゴンガスを封入したタイプで、Low-E複層ガラスより更に高い断熱性を発揮します。
■真空ガラス
こちらも複層ガラスの一種ですが、2枚のガラスの間が真空になっている点が大きく異なります。真空状態では熱の移動が起こらないので、究極の断熱ガラスということができます。
では、ご紹介した窓ガラス製品の熱貫流率の違いについてもみてみましょう。
代表的な窓ガラス製品の熱貫流率の比較 W/(㎡・K)
窓ガラス | ガラス構成 | 熱貫流率 |
1枚のガラスを1とした時の断熱性 |
一枚ガラス | FL3 | 6.0 | 1倍 |
複層ガラス | FL3+A6+FL3 | 3.4 | 約1.8倍 |
Low-E複層ガラス | Low-E3+A6+FL3 | 2.5~2.7 | 約2.2~2.4倍 |
アルゴンガス入りLow-E複層ガラス | Low-E3+Ar6+FL3 | 2.1~2.3 | 約2.6~2.9倍 |
真空ガラス | Low-E3+V0.2+FL3 | 1.0~1.4 | 約4.3~6.0倍 |
※FL3:フロート板ガラス3ミリ、Low-E3:Low-Eガラス3ミリ、A6:空気層6ミリ、Ar6:アルゴンガス層6ミリ、V0.2:真空層0.2ミリ
「熱貫流率」は断熱性の高さを表しているので、「複層ガラス」は一枚ガラスと比較して約1.8倍(6.0÷3.4)断熱性が高いということがいえます。上記ガラスを断熱性能が高い順に並べると、
「真空ガラス」>「アルゴンガス入りLow-E複層ガラス」>「Low-E複層ガラス」>「複層ガラス」>「一枚ガラス」
となり、それはそのまま結露の発生し難さの順でもあります。
真空ガラス「スペーシア」について
「熱貫流率」が低く、断熱性能が圧倒的に高い「真空ガラス」とはどんなガラスなのでしょうか。ここでは「真空ガラス・スペーシア」についてご紹介していきます。「スペーシア」は、魔法瓶の原理を透明な窓ガラスに応用し、二枚のガラスの間に真空層を設けた窓ガラスです。
熱の伝わり方には、「伝導」、「対流」、「放射」の3つがありますが、ガラスとガラスの間にわずか0.2ミリの真空の層を設けることで、「伝導」と「対流」を真空層によって防いでいます。さらに特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティングしたLow-Eガラスというものを使用することで、「放射」を抑えます。その結果として、1.0~1.4W/(㎡・K)というその他のガラスと比較して、圧倒的に低い「熱貫流率」を実現しているのです。
■「真空ガラス スペーシア」商品紹介動画
■「真空ガラス スペーシア」施工紹介動画
まとめ
今回は結露と関連のある「熱伝導率」・「熱貫流率」についてご紹介してきました。結露対策としてどんな商材を選べば良いのか? その答えはズバリ「熱貫流率」にあります。皆さんも結露対策としてリフォームを検討される際、「熱貫流率」に注目してガラスを選定してみてはいかがでしょうか。
窓リフォーム研究所
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