効果的な窓ガラスの台風対策とは?事前の備えで出来ること
年々、自然災害による被害が深刻化しています。また、地球温暖化の影響などによる台風の大型化や日本への上陸数の増加も懸念されています。時として私たちの生活に密接な窓ガラスが凶器となることもあります。今回は台風への備えとして、「効果的な窓ガラスの台風対策」について解説していきます。
目次
台風の上陸数は増加傾向にある
2010年から日本に上陸する台風は増加傾向に
では、年間どのくらいの台風が日本へ接近・上陸しているのでしょうか?
下のグラフは、過去10年の日本への台風の接近数・上陸数をグラフしたものです。2020年は上陸こそなかったものの、ここ10年間で台風の上陸数が増加傾向であることがお分かりいただけるかと思います。
※出典:気象庁HPより(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/index.html)
そして、注意すべきは数だけではないということです。近年では、数年に一度と呼ばれる大型クラスの台風襲来による被害の甚大化や梅雨前線なども影響したかつてない大雨による水害が多発していることも忘れてはいけません。
大型台風の接近時には養生テープの売り切れ騒ぎも
大型台風の襲来に備え、最近では窓ガラスの破損対策として使用する養生テープの売り切れ騒動なども発生しています。台風や地震などの自然災害へは、「いつ発生するかわからない」という前提に基づき備えを行っておく必要がありますが、直前になって「何か対策をしなければならない」(=「事前の備えが十分でない」)という心理が働きそのような事態を引き起こしてしまっていると考えられています。
台風時に窓ガラスが割れる要因と被害
台風により想定される住宅への一般的な被害としては、窓ガラスの破損による怪我や住宅の破損などが考えられますが、ここでは台風時に窓ガラスが割れる要因と被害について考えてみます。
まずは、窓ガラスが割れる原因ですが、次の2点が挙げられます。
- 台風時に窓ガラスが割れる要因
- 風圧で割れる
窓ガラスにはそれぞれの種類やガラスの大きさ・厚みに応じて、許容風圧力というものが定められていますが、台風などの突風によりその許容風圧力を上回る力を受けると、ガラスは風を受けきることができず破損してしまいます。
ガラスの許容風圧力は「N/㎡」という単位で表しますが、一般的に住宅で使用されている各種ガラスの許容風圧力は、以下の通りです。また許容風圧力はその数字が大きいほど風圧に強いことを示しています。
【ガラスの許容風圧力】
ガラスの種類 |
ガラス構成または厚み |
許容風圧力(N)※ |
一枚ガラス (フロート板ガラス) |
3ミリ |
1,575 |
複層ガラス (ペアガラス) |
3ミリ+空気層+3ミリ |
2,363 |
真空ガラス (スペーシア) |
3ミリ+真空層+3ミリ |
3,600 |
防災防犯ガラス (合わせガラス) |
3ミリ+特注中間膜+3ミリ |
3,375 |
※N/㎡:ガラス1m×1mの面積あたりの許容風圧力
許容風圧力という言葉自体、一般の方は馴染みがないと思います。風速と風圧の関係を正確に示すことは難しいので、あくまでも参考とはなりますが、よくニュースなどで耳にする瞬間風速(m/s)との関係を示すと次の通りです。
【瞬間風速と風圧の関係 ※参考値】
瞬間風速 |
風圧(N/㎡) |
10 |
61 |
20 |
244 |
30 |
549 |
40 |
976 |
50 |
1,525 |
60 |
2,196 |
70 |
2,989 |
80 |
3,904 |
上記の表を見比べてみると、実はガラスの許容風圧力はそれなりに高いということがお分かりいただけたかと思います。そうなんです、実は台風でガラスが割れるというのは風(風圧)で割れたのではなく、次にご紹介する「飛来物による破損」が圧倒的に多いんです。
飛来物でガラスが割れる
さて、台風によるガラス破損被害の大きな原因となる飛来物ですが、何が飛んできているのでしょうか?台風では様々なものが風で巻き上げられてしまいますが、台風による主な飛来物としては、住宅の屋根に使用されている瓦や屋外看板、折れた木々の木片やゴミなどもガラス破損の原因と考えられています。風圧力には強いガラスでも、硬い重量物などが強風と共に飛んでくれば、ひとたまりもありません。
割れたガラスによる被害例
台風により割れたガラスの被害は予期せず広範囲かつ甚大なものとなる可能性もあります。一旦ガラスが破損してしまうと、窓ガラスは窓枠から脱落してしまいます。ガラスの破片は鋭利なため重大な怪我に繋がる恐れがある他、窓ガラスが破損して穴が開くと住宅の中にもろに強風が入ってくることとなり、室内のものが破損するだけではなく、最悪の場合は屋根が飛ぶなどにより建物の崩壊につながる恐れもあります。
台風接近への備え
では大切な資産や人命をも脅かす台風ですが、私たちはどのような備えを行えば良いのでしょうか? ここからは窓ガラス周辺で行う対策や台風接近時の注意点について考えてみましょう。
窓ガラス周辺の対策
こちらは窓ガラスそのものへの対策ではありませんが、忘れてはいけない対策の一つです。ベランダや庭にある鉢植えなどは台風の到来前に家屋や倉庫へしまっておくことが大切です。自分の自宅被害を防ぐだけではなく、飛来物となって他の住宅などへ被害を及ぼすことを未然に防ぐことが可能となります。
窓ガラスそのものの対策
様々な方法がありますが、ここでは代表的なものについて紹介していきます。
養生テープ・ガムテープを張る
最も安価で容易な対策ではありますが、大きな効果は期待できません。まず飛来物が衝突した際の飛散防止効果がほとんどないことと、テープが貼られていない部分に飛来物が衝突した場合、容易にガラスが破損・飛来物が貫通してしまいます。またテープを貼ることで外の視認性が悪くなる他、台風の度にテープの貼り替え作業が必要となります。またテープをはがした際、ガラスに跡が残ってしまう場合もあります。
飛散防止フィルムを貼る
飛散防止フィルムといっても様々な厚みのものが存在していますが、かなり厚めのものを使用しないと飛来物への耐貫通性能など防災用途としては、十分な効果が期待できません。また、フィルムはその特性上経年劣化が避けられないため、10年程度経つと貼り替えを行う必要があり、その都度手間と費用が発生してしまいます。
防災性能の高いガラス「防災防犯ガラス」を導入する
2枚のガラスの間に1.5ミリ以上の特殊な樹脂の中間膜を挟み込んだ合わせガラス構造(車のフロントガラスに使用されているのも合わせガラス)のガラスで、2枚のガラスが中間膜を介して強固に接着されています。見た目も普通のガラスと変わらず高い視認性を確保でき、かつ飛来物が衝突した際には、高い耐貫通性能と飛散防止性能を発揮します。反面、今までご紹介した対策の中では最も高価である点がデメリットとして挙げられますが、経年劣化などによる取り替えも必要としないため、ガラスが破損しない限りは恒久的な対策として効果が期待できます。
【台風・強風による飛来物衝突試験映像】
台風接近時の注意点
その他、留意すべき点としては以下のものが考えられます。
窓・網戸・シャッターは閉めてロックする
しっかりと施錠を行っていないと、強風時にあおられて破損や落下してしまう恐れがあります。
窓やドアの開閉は極力控える
強風時に窓やドアを開けてしまうと、強風が室内に入り込み窓やドアの開閉が困難になる場合があります。
「防災防犯ガラス」に期待できる効果
ここでは最も台風対策として効果の期待できる「防災防犯ガラス」についてもう少し詳しくご紹介していきます。
「防災防犯ガラス」とは
2枚のガラスの間に1.5ミリ以上の厚みの合成樹脂を挟み込み圧着された合わせガラスのことを「防災防犯ガラス」と呼んでいます。
【防災防犯ガラスの構造図】
「防災防犯ガラス」の導入で期待できる効果
「防災防犯ガラス」では、主に以下の4つの効果が期待できます。
台風被害の軽減
台風・強風時、飛来物によるガラス破壊の被害を軽減します。
耐貫通性能の高さに加え、万一破損した際のガラスの破片が飛散しにくいのも大きな特長で、その差は通常のガラスと比較すると歴然です。また飛び散る破片の大きさも非常に小さいので、破損後の二次被害の軽減にも繋がります。
※飛散率とは、ガラスを強制的に破壊し、その時脱落した破片の総重量をガラス全体の重量に対する百分率(%)で表したもの
出典:財団法人 日本建築防災協会「ガラス飛散防止性能検討業務 報告書 平成15年3月」より
泥棒被害の原因となる窓ガラスの「ごじ破り」にも効果を発揮
ガラスと中間膜が強固に接着されているため、音を出さずに住宅へ侵入する「こじ破り」という侵入手口に大きな効果が期待できます。実に戸建て住宅への侵入手口の約67%(令和元年度集計・警視庁HPより)がガラス破りによる窓からの侵入といわれています。
地震の際も効果を発揮
地震などで家具などの重量物がガラスに衝突した際に被害の低減を図ることが可能です。
有害な紫外線をカット
ガラスに挟み込まれた特殊膜は紫外線(UV)をカットする特性があるため、カーテンや家具の色褪せ防止対策としても期待できます。
「防災防犯合わせガラス」の詳細はこちら
ラミペーンシェルター(防災防犯ガラス) | ガラスワンダーランド – 日本板硝子 (glass-wonderland.jp)
また、「防災防犯ガラス」には、該当製品である旨表示する各種制度が存在しており、下記の様なマークなどがガラスに打刻もしくはシールとして貼られています。
BL-bsマーク
一般社団法人ベターリビングでは、「屋根瓦の破片相当」以上の飛来物の衝突に対する安全性を有するものを「防災防犯合わせガラス」(BL-bs部品)と定義しています。
CPマーク
CPマークは防犯建物部品の共通標章で、防犯性能に優れていることを示しており、「防犯」=“Crime Prevention”の頭文字CとPをシンボル化しています。
まとめ
台風は毎年到来が予測されます。直前で対策するのではなく、いつ発生するか分からない災害への備えとして、被害を最小限に抑える「防災防犯ガラス」の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
窓リフォーム研究所
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